近頃の詐欺の手口、数え上げればきりがありませんよね。
最近では、携帯電話やスマートフォン、インターネットを使った新手の詐欺商法も生まれ、「オレオレ詐欺」も手口が変わったために最近では「母さん助けて詐欺」という名前になったそうですし、そのほかにも、クレジットカードの磁気データを盗み取る「スキミング詐欺」やら、大手信販会社によく似た紛らわしい社名やロゴを使って信用させ、ダイレクトメールで信用させて勧誘する「融資詐欺」、あたかも公共の団体であるかのように装って「年金の未納分をお支払いください」などとお年寄りを狙う「年金詐欺」などなど、よくもまあ次々と考えつくものだとあきれてしまうほど、巧妙です。
私たちが属する住宅業界でも、ソーラーシステムや温水器といった新しい住宅設備が開発されるたびに、詐欺まがいの商法や悪徳業者がその隙間を狙って横行しています。
訪問販売形式のシロアリ駆除の悪徳業者が、一時期、社会問題にまでなったことを記憶されている方もいるでしょう。
ひどいところだと、点検と称して、シロアリの卵を散布していくような業者もあったらしいです。
こういった業者に施工業者が雇われていることは少なく、実際に来るのは営業マンです。そのほとんどは契約社員で、賃金も歩合制のことが多いようです。
大規模な工事の契約をいくつもとれば、それだけ自分の懐も潤うわけですから、必要もない工事を勧めたり、正規のものよりもずっと割高な工賃を要求したりします。
こうしたエクステリア関連工事における業者トラブルは、1980年代の中ごろから増えてきています。
「リフォーム」という言葉がいつ頃から一般的なものになったのかはわかりませんが、1990年に入った頃から、訪問販売のリフォーム業はたいへん盛んになりました。
テレビコマーシャルも盛んに打っていた外壁材や屋根材のリフォーム大手会社は、ノルマの厳しさなどから、従業員による強引な契約を繰り返して、大きな社会問題になり、会社のイメージはがた落ちとなり、倒産に追い込まれました。
他にも似たような業者が次々と摘発されたことで、リフォーム訪問販売業者のイメージはとても悪いものとなり、普通の消費者が警戒するようなものになってしまいました。
今、これをお読みになっている皆さんは、ご自分の家の屋根に上がったことがありますか?
雪深い地方にお住まいの方なら、雪下ろしで屋根に上がったりすることもあるでしょうけれども、せいぜい布団を屋根に広げて干したりする程度で、屋根に上がる機会がない方がほとんどだと思います。
これは、床下も同じですね。
床下を覗いてみる機会は、普通の人にとってはめったにありません。
屋根、屋根上、床下……。
考えてみれば、自分の家なのに見たことがない場所って、意外とたくさんあるものですよね。
注文住宅なら、家を建てるときに、それなりに勉強して調べたり、建てている最中に足を運んで、工事の進み具合を見に行ったりすることもあると思います。
でも、建売住宅の場合は、間取りや外観などが購入の決め手ですから、構造に関しては大まかにはわかっていても、細部を確認するのは難しいでしょう。
外壁、壁紙、建具などが素人目には問題ないように見えたとしても、実際はどんなランクを使っているのかは、普通の人には判断できないのです。
家を買うことは、人生のうちでも最も大きなイベントだと言っていいでしょう。
毎月コツコツと住宅ローンを払い続けていく覚悟を決め、ようやく手にするマイホームです。
その大切なお家に、住宅の専門家を装った人がいきなり訪ねてきて、
「お宅の屋根が大変なことになっていますよ」
「屋根がつぶれるかもしれませんよ」
「床下の土台がシロアリにやられていますね。このまま放っておくと家が傾きますよ」
そんなことを言われたら、誰でも不安になって当然ではないでしょうか。
そんなふうに人間の心理を利用して、不安を煽り、その隙間に入り込んでくるのが、悪徳業者なのです。
悪徳業者のセールスマンは、家の問題点を大げさに指摘し、様々な口実を使って家に上がり込んできます。
そのやり口は、営業のプロのものかもしれませんが、住宅のプロであるかどうかはわかりません。
住宅に関する専門的な知識をどの程度もっているのか、わかりません。
単に売り込みたい商品についての専門用語をいくつか丸暗記しているだけで、一般人と変わらない素人だったりすることもあるのです。
このような業者は、初めのうちは安い金額を提示してきます。しかし、
「それぐらいの出費で済むのなら……」
と工事を依頼してみると、知らないうちに勝手に追加工事をしたり、高い材料を使ったからなどと工賃を水増しし、最終的にはびっくりするような大金を請求したりすることがあるのです。
家の見えない部分について、こんな指摘を受けたとしても、実際にはありもしないことを言っている場合が多いのです。
悪徳業者は、とにかく狙った標的の家に入り込むために、あらゆる手段を考えています。
きっかけさえつかめば、あとはお得意の口のうまさで、相手を信用させることができると思っているのです。
子どもたちが成長して家を出た後の老夫婦の二人暮らしなどは、悪徳業者の恰好の標的になります。
悪徳業者の手口があまりに巧妙なために、自分が騙されていることにすら気がつかないことがあるとも言われます。
とくに、一人暮らしで淋しい高齢者は、孤独なことが多いですから、優しく話しかけてくれる人があれば、ついうれしくなってしまうものです。
はじめのうちは世間話をしているつもりでも、ついつい業者の口車にのせられて、家族の話から生活状況、資産の話まで引きずり出されてしまうこともあります。
手慣れた業者は、高齢者が喜びそうな話題を用意し、上手におだてながら、機嫌をとって、うまい具合に契約まで話を進めてしまいます。
「あんなに親切にしてくれたんだから」
断ることもできずに、高額な契約書に判を押してしまうというわけです。
ニュースなどで、インターネットの会員情報が流出した事件を見聞きされることがあると思います。
自分には関係ないと思っていても、このような顧客情報には家族構成や誕生日、入学・入園の記録、いつ何を購入したかなど、実に様々な情報が含まれています。
そんな重要な情報が、流れ流れて悪徳業者の手に渡ってしまったらどうなるでしょう。
そういった情報をもとにすれば、契約の確率はさらに高くなる、と業者は思うでしょう。
「このお家の子どもは小学校高学年だから、そろそろ子ども部屋を考えているだろう」
「この器具を購入したのは何年前だから、買い替えたくなる頃だ」
どんな情報であっても、悪徳業者は利用してきます。
悪徳業者にしてみれば、手あたり次第にたくさんの家を回るよりも、データを頼りに「お金を払ってくれそうな家」をピンポイントで狙うほうが、はるかに効率がいいのです。
悪徳業者の営業マンは、相手が専門的な知識をもっていないことを利用します。
専門用語を乱発し、あたかも専門家のようなふりをしていますが、質問してもはぐらかすような感じで、的確な答えは返ってきません。
そもそも悪徳業者というものは、一般の人にとって日常的にあまり馴染みがないような業種に集中する傾向があるのです。
料金についても、仕事内容についても、消費者が細かな知識をもっていない業種が、彼らのねらい目で、その消費者の無知な部分に目をつけた商法を考え出すわけです。
契約の際にも注意してください。
たとえば、工事の内訳書がついていない契約書など、論外です。
どの工事にいくらかかるのか、何のためにその工事が必要なのか、その工事をするためにどんな設備が必要なのか。
こういったことについて、しっかり説明を受け、自分が見てわかる工事の内訳内容であるかどうか、確認することはとても大切です。
工事の内容をきちんと把握し、見積書や契約書といった工事に関する書類の内容は、面倒でも、必ず確認してください。
そして、もし内容に不安がある場合には、第三者に相談してみるなど、不安材料をすべて取り除いてから工事に入るのが、理想的な流れです。
信頼できる業者は、発注者が安心してリフォーム工事を発注できるように、保険機関に登録していますので、そういった業者を選ぶことも忘れないでください。
私たち森建築板金工業でも加入していますが、国が定める第三者機関が、工事の保証をしてくれる保険があるのです。
この保険に加入するためには、一定の条件と審査があり、万が一、リフォーム会社が倒産などをしてしまったとき(相当の期間、修補等の瑕疵担保責任が実行されないとき)には、発注者が保険金を直接受け取れる仕組みになっています。
契約してしまった後でも、契約に違法性がないか、契約の解除が可能か、といったことは、消費者センターに問い合わせることができます。
訪問販売の場合は、クーリング・オフ期間であれば、契約を解約できます。
悪質な訪問販売業者は、雲行きが怪しくなると、行方をくらましたり、倒産させてしまうこともあり、相手がいなければ話になりませんので、泣き寝入りしないためにも十分に注意することが必要です。
工事が始まっても、施工業者任せにしてはいけません。
工事前の写真や工事中の写真を撮って、工事の記録を残しておきます。
工事中に追加や変更が発生した場合でも、正確に記録しておいてください。
工事の内容が依頼したものと違う場合には、納得できる説明を業者から受けるなど、不明なことは何でも業者に聞くという勇気をもちましょう。
とくに重要な内容については、必ず書面で打ち合わせ、書面で回答をもらうようにしておけば、のちのち「言った」「言わない」などのトラブルにならずにすみます。
最近では、インターネットで被害に遭う人も多くなっています。
信じられないような安い価格を売り物にしている業者もいますが、実際に使われている材料が粗悪品だったり、手抜き工事だったりする場合もあります。
きちんとした工事をしようと思ったら、それなりの費用がかかるのは当然です。
単に仕事を受けたいために価格を下げても、その結果どこかに無理が生じるはずです。
良心的に仕事をしてきた会社にとって、こういった一部の悪徳業者の存在は大変迷惑なことで、仕事がやりづらくなっている状況も起こっています。
お客様の側も、悪徳業者に騙されないために、前もって信頼できる業者に診断してもらい、「自分の家は大丈夫!」という確認をもっていただきたいと思っています。
お客様自身が悪徳業者を見分ける目を養うことは、被害に遭わないための第一歩です。
リフォームをすることに決めたら、人任せにせずに、ご自分の目で様々な情報や知識を得る努力を忘れないでください。